2010年10月30日土曜日

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Startup School 2010



シリコンバレーで今最も旬なインキュベーショングループといっても過言ではないY Combinator主催のStartup School 2010が今から2週間前の2010年10月16日に行われ、参加費無料ということもあり告知後すぐに応募が殺到、結構な競争率だったんですが運よく抽選に通って参加することができました。アメリカ全土から参加者は集まってきて、やはりシリコンバレー、のっけの司会の「今まで1回でも会社作ったことある人!」という質問に会場の半数以上が手を挙げ、何か宗教的なノリやなと若干引きつつもやっぱりそこは自分もシリコンバレーコミュニティー所属者のはしくれ、Y Combinatorの理念に賛同するそうそうたるIT業界の名士たちが講演者として入れ替わり立ち替わり登壇するのをオーディエンスとして見ていることに興奮を覚え、そして「自分も必ずこの壇上に立ってやる」という思いを固くしました。

初めの登壇者はアンディ=ベクトルシャイム。スタンフォード大学校内のネットワーク用ワークステーションを独自開発をきっかけにSun Microsystemsを創設、そしてまだ大学の研究室レベルだった検索エンジンのGoogleに10万ドルのエンジェル投資をしたとしてシリコンバレー史に名を残しています。今回のお話はシリコンバレーのこれからについて。歴史的に見て経済・技術・文化・国家など様々なフィールドに影響を与え続けている特別な地域はシリコンバレーを除いて類を見ず、PARCをはじめ未来技術志向の研究機関やビジネスコミュニティーが非常に近接した立地にある優位性は計りしれず、絶えず激しい競争環境、新しい市場が生まれてそれが浸透する土壌などがそれを支えているとのこと。また面白かったのが、シリコンバレー界隈の有名企業の中で、(R&D費用/総売上高)の値が最も小さいが実はAppleだということ。"Less is More"の精神で常に選択と集中を行う企業で、ジョブズの"The hardest thing to do is to say No."という言葉にもその理念が滲み出ています。


Justin.tv - Andy Bechtolsheim, Founder of Sun, early investor in Google


そして次がY Combinatorファウンダーのポール=グラハム。彼の話は"スーパーエンジェル"に関して。現在シリコンバレーコミュニティーのスタートアップへの投資環境に大きな変化が生じており、今までのエンジェル投資家(投資規模:$20K~50K)とベンチャーキャピタル(VC、投資規模:$1M以上)の隔たりを埋めるかのように、VCのように他者からお金を集めてエンジェル並みの投資実行の速さを具現化したスーパーエンジェルが登場してきました。個人投資家の供出金額を寄せ集めて$300Kや$500Kを捻出するにはかなりの労力が必要な一方、多くのVCはこの規模の資金提供には関心がありませんでしたが、スーパーエンジェルが市場ニーズに合わせる形でこの隙間を埋めて投資エコシステムに変革をもたらしつつあります。これにより投資家間競争が激しくなり資金調達プロセスの迅速化・評価額の上昇という点でスタートアップにとっては良い傾向となり、今後スーパーエンジェル・ベンチャーキャピタルの役割は収斂する形で似通ってくるとのこと。ちなみにこれがレクチャーノート(The New Funding Landscape)です(日本語訳はこちら)。


Justin.tv - Paul Graham of Y Combinator


続いて「史上最速で成長したIT企業」と称され今や流通市場推定の時価総額10億ドル以上とも言われるGrouponファウンダーのアンドリュー=メイソン。スタートアップ環境下において「どんなことを達成したいか」、そして「自分が今すぐ使いたいと思えるモノ」にこだわって製品開発を進めるべきだとのこと。さらに守るべき6ヵ条として挙げたのがこの6項目。
- You're building a tool, not a piece of art (Don't be blinded by vision).
(今自分が作っているのはツールであってアートの一部では無い(ビジョンに囚われるな))
- Recogniza and embrace your constraints.(制約条件を認識し受け入れなさい)
- Have a growth plan.(成長プランを備えよ)
- The best tools aren't always that cool.(最高のツールが常にカッコイイとは限らない)
- You'll probably fail.(おそらく君は失敗します)
- Quit now.(今すぐやめなさい)
最初4項目はもちろんのこと、まぁ彼なりのエールで最後2項目は放ったと思うのですが、やはり皆が成功者を目指して全速力で駆け回っている以上、上手くいかない人たち・失敗する人たちが99%以上であることを理解した上で自分も同じ土俵に立たねばならないということを改めて強く認識しました。


Justin.tv - Andrew Mason, CEO of Groupon


そしてGitプロジェクトホスティングサービスとしてソーシャルコーディングプラットフォームを提供するGitHubファウンダーのTom Preston-Werner。一番印象に残ったのが"The best way to have a good idea is to have a lot of ideas."・"A team defines a product."という言葉。これはd.schoolで学んだ考え方に通じており、現にGitHubチームはフォーカスグループとしてRubyユーザーコミュニティーに行ってGitを広めて常にターゲットユーザーに近い位置にい続け、そしてオフィスを派手にするためにお金を使うなんて馬鹿馬鹿しいとのことで37SignalsのCampfireを起業後2年間の"オフィス"にするなどCost-Efficientな企業運営をしており、"Start writing first"を地で行くチームがGitHubです。また『フリー』ブームに警鐘を鳴らす意図があるか無いかは分かりかねますが、製品の市場価値をしっかり認識するためにきちんとサービスに価格を付けることの重要性も話していました。


Justin.tv - Tom Preston-Werner of GitHub


そしてシリコンバレーで最も有名なVCの1つSequoia Capitalのパートナー、グレッグ・マカドゥーがVCのこれからに関して講演。VCが資金を投下するのは問題そのものではなく、その問題を解決するアイディアであるということが基本であり、たとえ企業がRamen-profitable(ラーメン代が出せる程度の利益しかまだ出ていない状態)だとしても、シンプルで使いやすい製品をまず掲げて、顧客の常に近い位置をキープして迅速な開発を行うことが大切とのこと。"Do more with less."というたった4語の文に全てが詰まっているような気がします。

Justin.tv - Greg McAdoo, Partner at Sequoia Capital


続いて現在Greylock Partnersのパートナーで、Paypalを経てLinkedInを設立、その後FacebookやDiggにエンジェル投資を行い、ZyngaやKivaの取締役にも名を連ねるリード=ホフマン。Paypal時代の銀行との競争劇は全くつまらなかったと内情を少し話した後、外に目を向けてマーケットに直接足を運ぶこと、そして変化に対応する柔軟性の重要性を懇々と語っていました。

Justin.tv - Reid Hoffman of LinkedIn, Greylock


そして昼食を挟んで、15年以上エンジェル投資をし続け起業家をサポートするシリコンバレーの重鎮・ロン=コンウェイ。National Semiconductorを経て1979年にAltos Computer Systemsを設立して3年後に上場させ、以後自身が組成したエンジェル投資ファンドを通じてGoogleやAsk Jeeves、Paypalなどに投資したり、個人的にMintやFoursquare、Yammerなどにエンジェル投資をし、またFacebookやTwitter、Zapposの取締役を歴任するなど数々の功績を残し続ける偉人の一人です。今回の講演では自らが関わったNapster/Google/Facebook/Twitterでの歴史を伝えてくれたのですが、今最も後悔することは?との問いに「Salesforceの申し出を断ってしまったことかな」と答えて会場をざわめかせました。そして一番会場が沸いたのが、起業したいけれども年齢が気がかりという女性に、ロンが逆に今の年齢を聞き返した時「12歳」という答えが返ってきた時でした。さすがシリコンバレー、起業の低年齢化は大歓迎のようです。


Justin.tv - Ron Conway, SV Angel


次は、Q&Aサイトとして勢いを伸ばすQuoraのファウンダーで元Facebook CTOのアダム=ダンジェロ。レコメンド機能を有する音楽プレイヤーSynapseを高校の同級生だったマーク=ザッカーバーグと共同開発し、Facebookに本格参画してからはデータマイニングや分散システム開発のディレクターを経てCTOを務めた経験から、YouTubeやTesla Morters、LinkedIn、Yelpなどを排出する"Paypalマフィア"のように、ファウンダーのソーシャルコネクション、従業員としてスタートアップ企業経験を積めることの優位性を語っていました。とはいえ、物静かな人でした笑


Justin.tv - Adam D'angelo, Quora


続く講演者はImeem/PicPlzのファウンダー、ダルトン=コールドウェル。インスタントメッセージサービスとして設立したImeemを方向転換して音楽専用のソーシャルネットワーキングサービスとして創り上げ、Seqoia Capitalやロン=コンウェイなどから総額$50M以上投資を受け一時は$24Mの年間利益を叩き出したモンスターサイトでしたが、志半ばでMy Spaceにたった$1Mで悲運の売却を行うという波乱万丈な経験を有する彼が、音楽系スタートアップの現状と今後について語りました。かいつまんで言うと、彼曰く音楽系スタートアップビジネスは現状最も成功確率の低いビジネスだということ。音楽系スタートアップはユーザーが増えないと価値が高まらないニワトリ・タマゴの議論ではあるけれども、Tools for artists・Download store・Ad-supported・Subscriptionなど各ビジネスモデルは思いのほかスケールし難く、中々Tipping Pointに到達し辛いのが現状。しかし音楽メジャー市場が縮小していく中、大手音楽系企業が収益化の目処が立ちにくいスタートアップ発のビジネスに見切りを付けている今こそ、新たな価値創造のチャンスだとも言えることは間違いないでしょう。



音楽スタートアップは今が大きな転換の時期, imeemのファウンダDalton Caldwellが語る


Justin.tv - Dalton Caldwell of Imeem & Picplease


次は言わずと知れたFacebook CEO、マーク=ザッカーバーグがY Combinatorパートナーのジェシカ=リビングストンからのインタビューに答えていました。際立ったトピックとしては中国や日本などアジア地域の国際戦略。中国や日本、韓国、ロシアなどの国々でまだFacebookは国別No.1SNSの座を獲得できておらず、特に中国は文化・慣習・制度的に複雑な国でありまだ見極めに時間がかかりそうだとのこと。ナチズムに関する投稿に制限を設けているドイツ用Facebookのように何らかの措置を講ずる必要はあるかもしれないけれども、15億人の人口を無視して"世界をつなげる"というミッションを体現化することはできないとのことで中国戦略には注意を払って推し進めるとのことです。また映画"Social Network"に出てくるシャツやフリースは全部持ってるとのことです笑


Justin.tv - Mark Zuckerberg (full interview) Facebook


そして最後はY Combinator出身でSequoia Capitalからも投資を受けているAirBnBファウンダーのブライアン=チェスキー。"スペース"をレンタルするオンラインマーケットプレイスを提供するサービスで、初めは「誰が人の家に好き好んで泊まるんだ」と認められない日が続いてましたが、まさに継続こそ力なり、今では30000以上のリスティングがあり、中には変わったデザインの一軒家やリゾート地の別荘、中には船舶や城などバラエティー豊かな"スペース"が世界中から投稿されています。

彼の話は起業家にとっては非常に身近で、最初のプロダクトローンチからずっと鳴かず飛ばずで超低空飛行、SXSWに合わせてリニューアルしても全くレスポンス無し、生活を工面するために大統領選挙戦に合わせて(何故か)オバマ・マケイン両候補のシリアルを作って話題作りをするも効果は一瞬だけ。そんな中一昨年のStartup School 2008に参加したブライアンはここから奮起、Y Combinatorにアプライして見事合格、YC Demo Day以後順調にアクセス数を増やし続けて今は右肩上がりの成長を見せています。印象的だったのが、投稿数がまだ3件しか無かった頃、Y Combinatorのポール=グラハムの「その3人の所に行って話を聞いてきなさい」とのアドバイスを受けて実際にニューヨークにワシントン、デンバーへ飛び、ユーザーのフィードバックや感想を受け、そして自分たちが意図しなかった彼らの使い方がAirBnBのビジネスを根本的に変えた、ということです。プロダクトは常にユーザーのためにあるもので、ファウンダーのエゴは何の価値も持たないわけです。その気付きを得た彼らは、もう1つのポール=グラハムの名言"You won't probably die."(人間中々死なないだろう(から死ぬ気で頑張れ)。)を胸に製品開発を推し進めて今に至ります。

参考:Ask HN: Any desperate things you did just to keep your startup alive?


Justin.tv - Brian Chesky of AirBnB


これ以上ない位詰めに詰め込んだStartup School 2010。何より壇上と観客席の見えない"壁"の存在を実感することができ、早く自分のポジションを数段階上げねばと危機感をさらに募らせつつ、必要なものはたっぷり吸収して気合いを入れさせて頂きました。